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ストレスを軽減するためのオフィスデザイン

職場での慢性的なストレスによる「燃え尽き症候群」が従業員の健康を蝕むとして注意喚起がなされているが、オフィス環境を整備することで従業員の健康を守ることがトレンドとなっている。

2020年 08月 24日

オフィスのデザインを変え健康増進に寄与

ストレス環境が生産性を低下させる

長時間労働などを理由に、オフィスワーカーは過度なストレスに悩まされており、事業活動に悪影響を与えることを企業も認識し始めている。ストレスは生産性を低下させるだけではなく、不安神経症や不眠症といった病の原因になるためだ。

健康増進に寄与するオフィスを構築するためには経営方針や企業文化を見直していく必要があるが、オフィスの内装デザインを変えるだけでも大きな効果が期待できる。

欧米中心にワークプレイスに関するコンサルティング・サービスを提供するTétris シニア・ピッチ・デザイナー レイモンド・チューは「優秀な人材を誘致し、雇用を長期間維持するためにオフィスにおける『健康』が重要性を増す中、企業は従業員の健康を守るための対策に積極的に投資するようになっている。中でも、オフィスの内装デザインは企業文化を表すだけでなく、従業員の精神的安定に非常に大きな影響を与えることから、ワークプレイス改革において重視されている」と指摘する。

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眺望と採光性を活かしたオフィスデザイン

チューは「眺望に優れ、自然光を効率よく取り入れられるオフィスデザインは室内の雰囲気が明るくなり、従業員は活力を増す。たとえストレスがかかる状況に直面しても上手く対処できるようになるだろう」と説明する。従業員が業務時間の大半を過ごすオフィスが明るくなるよう、会議室を窓から離すのが理想的だ。

とはいえ、会議室が窓から離れていてもガラスのパーティション等を用いれば採光性は改善できる。さらに、スマートガラスも登場している。例えば米国ソルトレークシティーのOverstock本社では、従来のブラインドに代えて日光に反応するスマートガラスを導入し、眺めを遮ることなく適度に採光できる仕組みを導入している。

屋内緑化のバイオフィリックデザイン

オフィス内に植物を配置したり、リビングウォールや屋内庭園を設置したり、あるいはサイネージに自然風景や植物の画像を映すだけでもオフィス環境にゆとりをもたらすことができる。植物は空気をきれいにして快適にするだけではなく、血圧を低下させ、ストレスホルモンを削減させる効果もある。

チューは「人間は自然に魅了されるので、管理の容易な植物をオフィスに加えることで従業員の幸福感や健康が向上することを示す証拠が増えている。バイオフィリックデザインをオフィスに取り込むことで、緑がオフィス機能に統合され、創造性や生産性を高められる」と説明する。

また、植物だけではなく、木材や石材等の自然素材を壁や家具に使用することでアウトドア感覚を室内に取り込むこともストレス緩和に効果的だという。日本では、アウトドアグッズを開発・販売するスノーピークが展開する「アウトドアオフィス」が好事例といえるだろう。

リフレッシュ可能な休憩エリア

一日中机に向かっているだけでは、精神的・身体的な健康に悪影響があるため、立った状態でデスクワークを行う「スタンディングデスク」を採用する企業が増えている。また、居心地のよい家具やコーヒーマシンのある休憩室を設けたり、会議室へ向かう通路のしつらえを工夫することで、従業員がより活動的に過ごせるようになり、健康を維持することができる。

また、より多くの企業がカジュアルな打ち合わせや昼食、短い休憩等に使える休憩エリアを採用するようになっている。チューは「魅力的な内装デザインの休憩エリアは従業員に高く評価されており、オフィスでの健康を支える優れた手段となり得る。職場環境が気に入っている従業員は転職する可能性が低い」と指摘する。

音量管理を可能にするワークプレイス・ポッド

コミュニケーションを促すオープンプラン型オフィスでは「雑音」がストレスに大きく関係しており、音響に配慮した内装デザインを念頭に置くべきだろう。

例えば、英国のコワーキングスペース「Fora space」では吸音性のある天井梁を使用して静かなエリアを作り、厚いカーテンでオープンスペースのノイズを遮断している。そして、多くの企業がワークプレイス・ポッドを導入し、従業員が数時間集中して作業できるようにしている。また、クワイエットルームを導入することで、従業員の幸福度を高め、ストレス軽減に繋げる動きもみられる。

オフィスの色彩効果

効果的に「色彩」を活かすのも従業員の健康維持に寄与する。

チューは「スペースの用途を色彩で表現できる」と説明する。コラボレーションが求められるスペースでは、創造性を刺激するべく一般的により鮮やかで明るい色彩が用いられるが、集中力が必要なエリアでは青や紫といった抑えた色調が好まれる。緑色は安心感をもたらすと共に目に優しく、疲れにくい。

天井(とりわけスケルトン天井)やタイル、カーペットに色彩を施すことができ、色鮮やかな家具や植物、リビングウォールを加えることで室内の雰囲気はガラリと変化する。

程よいフレキシブルスペース

オフィスで従業員が窮屈に感じている可能性がある。そのままではストレスが高まり、生産性が下がりかねない。従業員が共用机、オープンヌック、静かな作業用机の中からその日のニーズに合わせてスペースを選べるフレキシブルオフィスは、よりストレスフリーなオフィス環境を提供できる。

チューは「従業員は自分用のスペースを求めている。プライバシーがなければ仕事をすることは難しく、ストレスが生じる」と指摘。企業にとってはフレキシブルオフィスでスペースを最適化できるという利点がある。

健康を重視した設計では、従業員一人ひとりが求める働き方のできる、異なるスペースを提供することが焦点となるのだ。

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