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多様化するサテライトオフィスと働き方

オフィスでも自宅でもない第二のオフィスとなる「サテライトオフィス 」への関心が高まっている。今までにないニューノーマルな働き方へとシフトする中、働く場所も目的によって変化し、新しい形が生まれ始めている。今回はサテライトオフィスの多様化と働き方について解説する。

2020年 12月 10日

サテライトオフィス多様化の背景

サテライトオフィスへ関心が集まったきっかけは、働き方改革の実現に向けて企業が動き出したタイミングへとさかのぼる。コアオフィス以外でも業務が行えるよう、交通利便性の高いターミナル駅や居住エリアの近くにサテライトオフィスを設置することで、子育てや介護を両立する従業員のワークライフバランスを保ち、人材獲得にも寄与した。また、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で推奨されているテレワークによるサテライトオフィス活用は、自宅で業務ができない従業員のニーズを満たすことにも繋がり、結果的に多様な働き方の選択肢にもなっている。ヒトと場所は深い繋がりがあるからこそ、社会情勢や環境によるヒトのニーズの変化で形を変えており、サテライトオフィスの多様化は今の時代を表しているともいえる。

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さまざまな環境や場所で開設されるサテライトオフィス

ホテルのワークプレイス化

サテライトオフィスの多様化の例として、ホテルを使ったリモートワークが挙げられる。新型コロナウイルス感染拡大によるテレワークの推進は、働くヒトにとって「場所」という概念を再定義するきっかけとなった。毎日の満員電車を経験せざるを得ない従来の働き方に対し、リモートワークで自宅もしくはその他の第二のオフィスとなる場所で自由に働けることから、リフレッシュもかねて普段とは違った場所での業務を行いたいという傾向が見られ始めている。それらのニーズと、コロナ禍による宿泊利用者の減少から、リモートワークの拠点として客室を提供しているホテルがマッチした、ホテルのワークプレイス化が増えてきているのだ。ホテルがこのようなワークプレイスに注力した取り組みはコロナ禍の前から進んでおり、柔軟な働き方を促進するフレキシブルスペースとして世界各地で広がりを見せていたが、コロナ禍をきっかけにその広がりは加速した。また、渡航規制により国内旅行への注目が高まっていることから、ワーケーションのホテル利用が増加し、週末のリフレッシュと平日のリモートワークをかけ合わせた休暇を取りながら働くという新しいワークスタイルもトレンドとなっている。第二のオフィスとなるサテライトオフィスは多様化することで、働き方だけでなくライフスタイルとのバランスを柔軟に掛け合わせ、人生において重要なトピックである「働き方・生き方」の質が向上する可能性は大いにあると考えられる。

多様化する働き方に適応した、駅構内など意外な場所のサテライトオフィス

柔軟な働き方を実践できるサテライトオフィスなどの共用オフィスは「フレキシブルスペース」とも呼ばれており、場所にとらわれない働き方はこの“フレキシブル”なコンセプトの元、ヒトの生活により近い環境で実践できるようになっている。例えば、駅構内の“駅ナカシェアオフィス”や、1人で集中して業務を行いたい方へ向けたソロワーク用のスペースが開設されており、移動時間を節約することが可能となる。また、温浴施設併設型のワーキングスペースで、くつろぎながら仕事をすることができるフレキシブルスペースも存在している。今では、サウナ好きのコミュニティの中で口コミが広がりオフィスワーカーが交流を深め、イベントなども企画されているそうだ。フレキシブルスペースのコンセプトにより、生活の中で当たり前にあった意外な場所にサテライトオフィス化が広がることで、生産性を向上するだけでなく、ワークライフバランスの維持やコミュニティ構築によるイノベーションの創出に貢献していくことに期待したい。

サテライトオフィスの多様化がヒトの働き方にもたらす影響

数年前までは想像もしていなかったような環境や場所でのサテライトオフィス化が進み、時間や場所にとらわれない多様な働き方ができる時代となった中で、本社拠点のオフィスが不要となるのかというと、決してそうではない。従業員が同じ場所に集う機会が減ってきているからこそ、オフィスでのFace to Faceのリアルなコミュニケーションは働く上で欠かせない要素だと再認識され始めている。そのリアルなコミュニケーションによって上司や部下、同僚など従業員同士とも繋がっていくことで、モチベーションの向上や新しいアイデアの創出、会社への帰属意識を高めるきっかけになっているのだ。JLLが実施した「新型コロナウイルスがオフィスワーカーに与えた影響に関するサーベイレポートvol.2」によると、新型コロナウイルスの影響での在宅勤務でミレニアル世代を中心にオフィスへ戻りたいというニーズが上昇しているというデータが確認されている。その理由として「人との交流や同僚との付き合い」という回答が39%ともっとも高く、「対面での共同・共有作業による共通理解や結束感」が30%と続いている。サテライトオフィスの活用は多様な働き方を実現させてくれるが、“ヒト”で成り立つ仕事だからこそ、人間本来の要素を念頭に置いた働き方の進化が今後ますます重要となってくるだろう。

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