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日本の不動産に海外投資家が注目している理由

投資家は低金利と強力なファンダメンタルズに惹きつけられ、日本への投資機会を模索している。

2023年 06月 06日

2023年に入って日本の不動産投資市場は世界屈指の活況さを取り戻している。背景にあるのは低金利政策だ。投資環境の優位性を維持していると、世界的に高く評価されている。

JLLのデータによると、2023年第1四半期における日本の商業用不動産投資額は88.7億米ドル、前年比41%増(米ドルベース)を記録した。

日本に対して旺盛な投資意欲を見せる海外投資家が原動力となっている。同四半期における海外投資家による投資額は前年同期のほぼ2倍となる20億米ドルとなった。

国内外の不動産投資市場に詳しいJLL日本 キャピタルマーケット事業部 リサーチディレクター 内藤 康二は「他国の主要市場と比べて日本は低金利で資金調達できるため、多くの海外投資家が日本市場に積極的に参入しようとしている」と指摘。海外投資家にとって円安が最大の恩恵となっており、「日本の力強いファンダメンタルズは、日本に資金を投入する投資家にとって依然として最大の魅力となっている」と説明する。

実際、同四半期における日本市場が積み上げた投資額は突出している。JLLのデータによると、南北アメリカ地域とヨーロッパ地域の投資額は前者が660億米ドルで前年比61%減、後者が350億米ドルで前年比58%減となるなど、世界の主要市場の状況とは対照的な状況で、まさに日本の一人勝ちといった様相だ。

投資を引き寄せる磁力

日本の投資市場を牽引するのはオフィスセクターだ。2023年第1四半期に行われた取引事例の代表例として、シンガポール政​​府系ファンドであるGICが大阪の「北浜ネクスビルディング」を取得した事例が挙げられる。

日本市場における最大の投資先がオフィスセクターとなり、同第1四半期の総投資額の50%を占めた。投資家が日本市場の回復力を評価し、旺盛な投資需要を惹きつけた結果、アジア太平洋地域におけるオフィスセクターへの投資額は前年同期比110 %超増加し、45億米ドルにまで達した。

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一方、足元では投資意欲が前向きに改善しつつあるものの、オフィス以外のセクターは回復度合いに濃淡が表れている。内藤によると「日本市場へ参入する海外投資家にとってオフィス以外に物流不動産と賃貸住宅が依然として高い人気を誇っている」という。

例えば、2023年4月には、プライベート・エクイティ大手のブラックストーンが保有していた日本の物流ポートフォリオ6物件をGICが8億米ドルで取得した事例が象徴的だ。また、米国の不動産投資・開発会社であるハインズが東京と京都に所在する賃貸住宅5棟を取得、今後5年間で資産価値を10億米ドルにまで拡大する意向を示している。

楽観視できる理由

アフターコロナを迎え、日本経済の回復と低金利環境の継続を背景に、2023年も投資意欲は引き続き旺盛であると予想される。

JLLのグローバルレポート「Global Real Estate Perspective」によると、世界的な金利動向として最終的に上昇する可能性はあるものの、急速かつ積極的な引き締め期間を経て、今後さらなる金利上昇の可能性は比較的低いとしている。その半面、日本の状況は多少異なる。内藤は「現在の消費者物価指数(CPI)は抑制されており、他の主要国に比べて大幅に低いため、日銀は短期的に利上げに動かない可能性がある」と指摘する。

世界の不動産投資市場における不確実性は継続する可能性があるなか、JLLアジア太平洋地域 キャピタルマーケット CEO スチュアート・クロウは楽観視できる理由を次のように述べている。

「市場は依然として厳しい状況が続いており、多くの投資家は融資基準の厳格化により商業用不動産市場にさらなる不確実性がもたらされると考えている。しかし、アジア太平洋地域は不確実性から独立しており、当該地域の流動性リスクは十分に抑制されていると我々は確信している。投資活動の再開はタイミングの問題に過ぎない」

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連絡先 内藤 康二

JLL日本 キャピタルマーケット事業部 リサーチディレクター

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