リサーチ

グローバル不動産マーケットの展望 – 2023年8月

厳しい経営環境が続く中、市場の動きは鈍く

不動産セクター動向と世界の不動産市場の展望

世界経済に重くのしかかる圧力は、2023年第2四半期まで続き、さらなる利上げやインフレ率の上昇が投資額の回復を遅らせる厳しい市場環境の一因となっている。テナントは、意思決定にたっぷり時間をかける慎重な姿勢を維持しており、資本コスト上昇と投資家の保守的な投資分析もあいまって投資市場の低迷が続いている。

不透明感の高まりは第2四半期のオフィス市場にも影を落としている。世界のオフィス賃貸借契約面積は、一般的に年間で最も動きが少ないとされる第1四半期に比べれば7%増となったものの、前年同期比で14%減となった。ネットアブソープション(吸収需要)に関しては、アジア太平洋地域でプラスだったものの、北米と欧州の入居率低下で相殺され、世界全体でみた第2四半期はマイナスとなった。

そして、物流セクターも減速が見られた。その背景としては、欧州や北米での経済成長の鈍化や空き物件の乏しさが表面化したことの影響が挙げられる。

金利引き締めサイクルは依然として世界経済に多大な影響を与えており、世界全体の成長は年末まで減速に拍車がかかる可能性があるが、労働市場は堅調に推移しており、消費者心理の改善が小売売上高と個人旅行の需要を支えている。インフレが鈍化し、金利のピークが近づいていることから徐々に安定化に向かいつつある。

利上げ基調は長期化の見通し

世界のキャピタルマーケットを詳しく見る

このような流動的な経済情勢は中央銀行に影響を与え続け、インフレ対策として一層の高金利路線が長期化すると予測される。借入金コスト上昇と指数のボラティリティを背景に、世界的にレンダーのセンチメントや市場動向が影響を受けており、ほとんどの市場で借入コストの変化が確実に広がっている。ただ、債券市場の流動性は比較的安定しており、融資環境も安定している。さまざまなレンダーが複数のアセットクラスで事業展開しているが、レンダーが寄せる信頼感は一様ではなく、特に大きな信頼を寄せているのが物流施設と居住用不動産である。

世界の不動産市場では価格発見が続いており、改善の兆しが見られる。ビッド・アスク・スプレッドは縮小傾向にあり、この動きは入札活動の改善と一致している。第2四半期は多くの市場で利回りがさらに拡大する中、米国は価格調整が最も進み、欧州とアジア太平洋地域では価格発見が本格的に進行した。しかし、制約の多い投資市場は、特にオフィスに関して価格形成のデータポイントが限定的となっている。状況の改善が続く中、不動産のセクター間や市場間の二極化がますます顕著になる見通しだ。市場回復への道筋は平坦とはいえず、今年下半期に向けて不透明感が根強く残るものの、曲がりなりにも先行きが予測できそうな状況を取り戻しつつある。

レポートをダウンロードするにはフォームにご記入ください。

プライバシー通知

ジョーンズ ラング ラサール(JLL)並びにその子会社・関連会社は、不動産に関わるすべてのサービスをグローバルに提供する総合不動産サービス会社です。JLLは責任をもって自社で取り扱う個人情報を保護します。個人情報は、お問い合わせの対応、当社サービスやイベント等のご案内を行う目的で収集されます。JLLが収集した個人情報は適切なセキュリティ対策で保護するよう努め、正当な事業上または法律上の理由によって必要とされる限り保管します。その後は、安全に確実に情報を削除します。JLLによる個人情報処理方法の詳細については、プライバシーステートメントをご覧ください。