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オフィス内に気分転換スペースをつくる意義

幸福度への関心が高まるなか、今日のオフィスでは「クワイエットルーム」が常識になりつつある。

2019年 10月 24日

よりよいワークライフバランスを求める声に順応する企業が増えつつあり、より多くのオフィスで考え事をしたり瞑想や祈祷を行ったりできる「クワイエットルーム」が設けられるようになった。

小さな会議室の使用方法を変更し、ベーシックな什器を設置したというケースもある。こうした空間をどこに設けるかを考え、祈祷の前の手洗いを可能にしたり、照明や空調に工夫を凝らしたりするために予算を充てる企業が増えている。

JLL子会社Tétris UKのデザイン・コーディネーター、Daithí Naughtonは、「雇用主側は従業員の情緒的・信仰的な幸福度に重きを置くようになっており、これもそうした変化の一部だ」と語っている。

Daithí Naughtonは、「若い世代の被雇用者は、自分たちのニーズに見合うさまざまなタイプの施設を備えたワークプレイスを望んでおり、雇用主の大半は現在、そうした世代にアピールすべく工夫をこらしている。雇用主としては、『日中に祈りを捧げたいならば、そのニーズを満たせる質の高い設備を提供しよう』と公言したいだろう。特別な対応としてアピールするのではなく、さまざまな背景を持つ従業員をサポートする準備があることを示したいのだ」と述べる。

信仰を保つ

公認会計士協会のロンドンオフィスには、イスラム教徒のためにメッカの方角を示したKa’abaのシンボルが天井に描かれている。また入口は祈りを捧げる人物の背後になるよう設計されているため、祈りの最中に目の前を横切られるようなことがない。

この部屋は柔らかい照明を用いており、マットを収納する棚や足を洗うためのシンクとたらいも用意されている。医薬品大手のBayerにも特製の洗足場があり、おけの周囲にスツールを置いて、複数の人間が同時に足を洗えるようにしている。

Naughtonは、「異なる信仰の持ち主がクワイエットルームを共有する場合、特定のグループが内部を装飾したり占有時間を伸ばしたりして、空間を独占することがないように配慮すべきだ」と語る。カラーリングはニュートラルなものにし、空間には極力ものを置かず、異なるグループが物品を保管できるようにするのが一般的だ。

ひと息つく空間

クワイエットルームには宗教以外の用途もある。絶え間なく送られてくるEメールや電話会議、あるいはいくつもの納期からしばし離れたいという人も利用できる。メンタルヘルス財団(The Mental Health Foundation)によると、過去1年の間になんらかのメンタルヘルス問題に直面した人間は、イギリスの成人の2/3以上にのぼるという。よりポジティブなワークプレイス体験を生み出し、人々の活気と積極性を維持することを目的とした、企業の幸福度戦略において、クワイエットルームが果たす役割は大きくなっている。

これにはビジネス上のメリットもあり、メンタルヘルス財団の概算によると、職場における幸福度への取り組みを通じて、最大12%ほど生産性が上がるとみられている。

クワイエットルームは昼休みのちょっとしたヨガや瞑想といったアクティビティの場所として定期的に利用することもできる。こうすれば目的は異なっても、空間を利用したいすべての人間に利用してもらえる。

ただし従業員がその目的を正しく理解し、どういった用途が認められないのかを理解できるように、基本的なルールを設ける必要はあるだろう。Naughtonは、「個人的な電話をする場所でもなければ、他のスペースが埋まっているときに使う即席の会議室でもない」と論じている。

オフィスビルにおけるクワイエットルームの配置は、多くの企業にとって大きな関心事となっており、地下の隅に隠すのではなく、よく目立ち簡単にアクセスできる場所に置こうというのが主流である。JLLが新規オープンしたマンチェスターのオフィスでは、自然光がふんだんに入る場所にあえてクワイエットルームを設けた。

Naughtonは「企業は幸福度の推進を真剣に考えており、こうしたクワイエットルームが積極的に利用されるのを望んでいる。恵まれた立地にクワイエットルームを配置することは明確なメッセージとなるだろう」と言う。

従業員の勧誘・確保のために幸福度に重きを置く企業が増えるなか、Naughtonはクワイエットルームの設置に乗り出す事例がますます増えると考えている。

Naughtonは「モダンオフィスにとってクワイエットルームはとりたてて高額な投資にはならないが、適切に設置できれば、『従業員の声が届くワークプレイス』という付加価値を与えられるのだ」と結論付けている。

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