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コロナ禍を機にアジア太平洋地域でデータセンター投資がさらに加速

新型コロナウイルスをきっかけに日常生活でオンライン需要が急騰した。多くのビジネスマンがテレワークやウェブ会議等の有用性に気づかされたことだろう。通信インフラとなるデータセンターの需要はこれまで以上に高まるはずだ。そしてデータセンターはアジア太平洋地域において新たな投資領域としてこれまで以上に注目を集めることになりそうだ。

2020年 06月 23日
オンライン化でデータセンター需要が高まる

世界経済が新型コロナウイルスの圧力に晒される中、不動産投資家は景気低迷期を乗り越えられそうな、より手堅い投資戦略を求めている。

日常生活におけるオンライン化がますます進展する中、そのインフラとして重要な役割を担うデータセンターは投資家から注目される新たな投資セクターだ。

JLLアジア太平洋地域 キャピタルマーケット オルタナティブ ヘッド ロヒット・ヘムナニは「ここ数年、データセンターへの投資が増加しており、新型コロナウイルスの世界的感染拡大がこれを加速させている」と説明する。

データセンターは、パンデミック発生後の世界のREIT市場で最も業績好調なアセットクラスの一つだ。米国では業績上位10位のREITのうち4つがデータセンターREITとなっている(2020年5月22日時点)。

広範なロックダウン、ソーシャルディスタンス、そしてテレワークなどが定着し、日常生活の多くのシーンがリアルからデジタルへと移行した。このことがデータセンターを含むデジタルインフラへの需要を増加させたのである。

シナジー・リサーチグループによれば、大規模な能力を備えた大規模データセンターに対する投資は2019年に合計1,200億米ドルを超え、パンデミックを経てもこの勢いは大きく失速させるには至っていない。

テレワークの本格導入も追い風に

多くの企業の社内データセンターには多くの従業員がテレワークを同時に実施するために必要なデジタルサポートを提供する能力がない。ヘムナニは「とりわけ従業員によるプライベートネットワークから企業ネットワークへのアクセスの安全性を確保する能力が欠けている」と指摘する。

どのような規制がどの程度の期間継続するのかについて不透明さが付きまとうが、短期的にネットワークサポートへの依存が緩和される可能性は低い。

企業が業務をクラウドへと移動させ、新型コロナウイルスのパンデミック中も最大限の事業運営を行うためテレワーク能力を拡大する中で、リサーチ会社であるIBISWorldは2020年のデータストレージサービス業界の予想収入を6.1%増から12.7%増へと上方修正した。

しかし、同セクターがこの需要を満たすためには、土地、新規開発、既存施設の再開発といった形での投資の増加が不可欠だ。

2020年4月にはアリババクラウドがクラウドインフラに280億米ドル超の投資を行い、今後3年間に経済のデジタル化を支えるデータセンターを建設する計画を発表した。

ファイバーネットワークやプロセッサーなど、インフラ依存度の高い業界ではあるものの、データセンターセクターは土地や実物資産へのアクセスと建築経験なくして存在し得ない。

ヘルナニは「一見ハイテクに見えるかもしれないが、変化が著しく先が見通せない現在のような状況下では、多くの投資家にとってより確実なリターンを提供する不動産投資先としてデータセンターが認識されつつある」と力を込める。

世界で最も成長するデータセンター市場はアジア太平洋地域

データセンターは世界中で成長が認められているものの、シスコの「グローバル・クラウド・インデックス:予測と方法論」はアジア太平洋地域が最も急成長する地域だと指摘している。同レポートでは、2020年末までに世界のデータサーバーの47%がアジア太平洋地域に集中することになると予想しているのだ。

データセンターの世界的リーダーであるEquinixはアジア太平洋地域のクラウドとITサービスが2022年を通じて複利年率換算50%成長し、他の地域を圧倒すると予想している。

新型コロナウイルスのパンデミック以前には、5Gやクラウドブームを受けて利便性の向上のため新たな技術が必要となり、これがデータセンターの開発に拍車をかけた。同地域の主要投資家や大手不動産会社の多くが数十億米ドルをデータセンターに投じていたのだ。アジア太平洋地域の主要市場にはシンガポール、香港、シドニー、東京が含まれ、高成長市場にはインド、中国、ジャカルタ等が名を連ねる。

アジア主要国でデータセンター投資が加速

シンガポール政府系ファンドのGICは、アジア太平洋地域や欧州におけるデータセンター投資の有力プレイヤーだ。2020年初頭、GICは世界210カ所にデータセンターを有するEquinoxと10億米ドル超を投じて日本で合弁事業を設立すると発表した。

「我々は長期的投資家として、データ消費とパブリッククラウド・データストレージの高成長が大規模データセンターへの長期的な需要を牽引し続けることを確信している」とは、GICが発表した当時のプレスリリースの一文だ。

2019年、オーストラリアの不動産およびインフラグループであるレンドリースはパートナー(非公開)と地域内のデータセンターに10億米ドルを投資すると発表した。

中国では新型コロナウイルス後の新経済を支えるため、データセンター、5G、人工知能を含む新しいデジタルインフラネットワークを構築すると発表している。エンドユーザーの待ち時間を削減してユーザーエクスペリエンスを改善させることが動機であり、これが国内5Gネットワークの基盤となる。

ヘムナニは「近代的データセンターに対する需要は過去にないほど強まっている」と強調する。とりわけデベロッパーの間では、不動産が5Gの屋台骨となるという認識が広がっている。2020年5月、日本の大手デベロッパーである三井不動産がKDDIと連携し、5G を活用したオフィスビルのデジタルトランスフォーメーションを推進する動きは、そのひとつといえるだろう。

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