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コロナ禍に適応する「未来」を描くホテル業界

コロナ禍による観光需要の急激な落ち込みによって世界のホテル業界は変化を余儀なくされている。新たな感染防止策や清掃慣行がニューノーマル化し、新たな業務モデルを模索する動きが強まっている。

2020年 10月 15日

コロナ禍を経て変化するホテル業界

新型コロナウイルスの世界的大流行はホテル業界を混乱に陥れ、 米国だけでも3月-4月には5,000軒を超えるホテルが閉鎖 。そしてホテルデータ事業者のSTRによれば6月初めになっても半分近くが休業中だという。

数カ月に渡る渡航制限を経て、一部の国々で少しずつではあるが観光客の受け入れが始まっており、地域内旅行が本格化しつつある。

しかし、世界は依然としてパンデミックに立ち向かっている最中であり、通常営業には程遠い状態が続く。ホテルは過去に例のないほどウイルスに敏感な市民の要請に応える形で清掃手順や業務モデルを変化させている。

徹底した感染防止策を策定するグローバルホテルグループ

JLLホテルズ&ホスピタリティ・グループ リサーチ グローバルヘッド ジェラルディン・グイチャードは「現在、多くの人々にとって理想的なホテル滞在は人的交流が非常に少ないものとなっており、見るからに清潔であることが期待されている」と指摘する。

表面消毒用の静電スプレー機や、消毒液メーカーとのパートナーシップ、清掃等の新たなガイドライン・手順策定のための医療専門家との協力等、 グローバルなホテルグループは徹底した感染防止策を発表 している。

マリオット・インターナショナルは4月にグローバルなクリーンリネスカウンシルを発足させ、清掃技術への投資を発表した。ヒルトンは清浄消毒製品の製造業者であるRB社と提携し、全施設の清掃手順について米国病院ランキング1位のメイヨー・クリニックのアドバイスを受けている。

欧州では、ウィンダム・ホテルズ・アンド・リゾーツが最高級の消毒剤の使用や重要な医療用品への継続的アクセス等、安全衛生手続き強化を中心とした「Count on Us」プログラムを拡張している。

また、業界団体も議論に加わっている。アメリカン・ホテル&ロッジング協会は、5月にホテル業界の新衛生基準「Stay Safe(安全な滞在)」を発表し、接触頻度が高い箇所の頻繁な消毒や、ビュッフェに飛沫感染防止用のアクリル板を設置する等の対策を施すよう求めている。この基準は、アソシエイテッド・ラグジュアリーホテル・インターナショナルやグローバル・ビジネス・トラベル・アソシエーション等、北米全域のホスピタリティ団体に承認されている。

ホテルは新たな業務モデル転換を求められる

アメリカ大陸でアセットマネジメント事業を展開するJLL ホテルズ&ホスピタリティ・グループ アセットマネジメント マネージングディレクター アンドレア・グリッグは「これらの変化は、コロナ禍前には許容されていた清掃慣行が今や不十分となっていることを示しており、 ホテルにはこうした基準を満たすため新たな業務モデルを採用することが求められている 」と指摘する。

こうした変化の多くは営業再開を間近に控えた段階に限られない。むしろ、それはホテルオーナーや運営会社がコロナ禍を機に形作られる「未来」を模索する中での長期的な業務モデルの転換点であることを示唆している。

JLL EMEA ホテルズ&ホスピタリティ・グループ リサーチ ヘッド ジェシカ・ジャンスは「宿泊客は、パンデミックによる精神的影響が長期化する中で、医療上の予防措置が中長期的に実施されているという保障を求める可能性が高い。これにより 消費者は独立系のホテルやAirbnb等のシェアリング型の宿泊施設よりも信頼感のあるホテルブランドを選好する可能性が高い 」との見解を示している。

ホテル回復の鍵は旅行業界

全米旅行産業協会によれば、新型コロナウイルスは3月初旬-5月16日にかけて米国の旅行業界に1,760億ドルの累積損失を生じさせているという。

米国のホテル稼働率は2020年4月に前年64%から25%未満へと縮小。STR社は「過去最悪の月間記録」と表現している。

ホテルの回復速度は、主に旅行業界にかかっている 。JLL ホテルズ&ホスピタリティ・グループ グローバル・ツーリズム及びデスティネーション開発サービス担当ディレクター ダニエル・フェントンは「すなわち人々は飛行機に搭乗する意思があるのかという点にかかっている」とし、次のように語る。

当初、旅行者は飛行機よりもドライブによる国内観光を選択する可能性が高い。その後は個人出張が増え始め、グループでの出張がこれに続くだろう。団体レジャー旅行の回復にはより長い時間を要するだろう」

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ホテルからの用途変更も視野

ラテンアメリカ地域でアドバイザリー業務を展開するJLL ホテルズ&ホスピタリティ・グループ シニア・ヴァイス・プレジデント ウェンディー・チャンは「こうした長期的な展開や予想の不透明感の継続とソーシャルディスタンスの再強化により、一部のホテルは営業再開のコストを正当化できない可能性がある」と分析する。この結論は、ホテル投資家や運営業者にコワーキングスペースへの転用の他、マルチファミリー(集合住宅)、シニアリビング、学生寮等の一時利用や用途変更の検討を促している

市場回復までホテル業界は事業再考の過程が続く

とりわけ観光業への依存度が高い地域は世界経済の早期回復を期待している。年間4,000万人の観光客数が報告され、ラテンアメリカで最も人気の渡航先となっているメキシコ。国立統計地理情報院(INEGI)によれば2020年4月の外国人観光客数は前年同月比80%近く減少した。

メキシコの回復速度は外国人観光客に占める割合が最も高い米国とカナダの景気回復に依存している といえるだろう。

チャンは「世界のホテル市場の回復速度の行方はワクチンの承認と配布のタイミング、そして人々が旅行に必要な所得と自信を取り戻すタイミングにかかっている。 それまでの間、ホテル業界は事業再考の過程であり続けるだろう 」と結論づけた。

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