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回復の兆しを見せる中国に注目が集まっている

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中、中国・武漢の工場が稼働を再開させるなど、世界に先駆けて回復の途上を歩み始めた。一部の産業では明るい兆しが見え始めており、「アフター・コロナ」の初期段階で何が起こっているか、世界から注目されている。

2020年 05月 08日
中国・武漢の工場が再稼働、オフィスも再開

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により閉鎖を余儀なくされた後、中国・武漢にある小さなフィットネス用具製造工場が2月末に操業を再開した。マスクなどの保護用具を身につけることが義務づけられたものの、ついに製造が再開したのである。

世界各地でロックダウンが実施されているが、中国は1カ月以上前に新型コロナウイルスの症例が減少に転ずるや企業や社会全体に対する規制を緩和し始めた。

そして、工場が再開しただけではない。就労者もオフィスに続々と復帰し始めた。都市間の移動も緩やかに回復しており、国内観光がこれに足並みを揃える。ショッピングセンターやレストランも営業を再開しているが、厳格なソーシャルディスタンス政策の枠組みは維持されている。

専門家によれば、完全な回復までは依然として長く困難な道のりが残っているものの、回復の兆しが見え始めているという。

JLLアジア太平洋地域 チーフリサーチオフィサー ロディー・アランは「引き続き非常に慎重な姿勢が続いているものの、一部セクターにおける経済活動の復活は、各国に対して回復の兆しがどのようなものになるのか洞察をもたらしている。中国に他の国々の未来を垣間見ることができる」と指摘する。

まだ就労者の職務復帰は始まったに過ぎず、当然ながら経済成長率は新型コロナウイルスの感染拡大前と比較して緩やかとなるだろう。工場の活動は3月に本格化したが、経済学者は「世界的な景気減速に直面してこれを維持できなくなる可能性がある」と警告している。中国全土の道路や公共交通機関もまだ完全には回復していない。

一部業界で明るい兆しが見え始める

一方でアランは「新型コロナウイルスの世界的感染拡大によりほとんどの業界が停止したが、中には潜在的な事業機会を捉えた企業もある。貿易やオフショア化への依存度が低い一部の業界に明るい材料が見られる」との見解を示す。

テクノロジーは、そうした業界のひとつだ。ビッグデータやクラウドプラットフォーム、人工知能などを扱う事業は、新型コロナウイルスの流行中に不可欠なサービスであることが証明された。アランは「中国の巨大な国内消費者基盤にアピールしたデジタル経済は、比較的よくこの嵐に耐えている」との見解を示す。

中国国内のデジタル大手1社は、メディア企業への相当な投資を完了し、深圳におけるオフィスフロアを拡大しつつある。また、急拡大中のEコマース事業者もあり、事業を統合しつつ深圳に床面積20,000㎡を超える地域本店を設置した。

こうしたパンデミックからの回復は、テクノロジー主体のビジネス地域でも証明されている。JLLのAグレードオフィス市場調査によれば、深圳南山区のハイテクパークは、市内で最もインターネットサービス会社が集中している区域であり、第1四半期に安定的稼働率を維持したわずか2区域の1つである。

他にもこの嵐に耐えた業界として、感染拡大後に加入者が急増した保険会社やロックダウン中に加入者が増加したオンラインエンターテインメント会社等が挙げられる。

アレンは「明るい兆しが見え始めており、いずれも貿易のような伝統的産業ではなく国内需要に関連している」と語る。

明るい兆しは見始めているが業界ごとに温度差

中国が新型コロナウイルスの感染拡大に対して都市全域をロックダウンした手法について、JLL中国 サプライチェーン コンサルティング ディレクター ピーター・ルーは「他国にロードマップを提供した。重大な山場を超えれば、職場復帰は可能である」と述べている。

しかし、ルーは課題が残ることも指摘している。新型コロナウイルスの世界的感染拡大により、中国はグローバルな需要の減少に直面している。国内では、3月末以降労働者が完全復帰したことで労働力不足は解消されているものの、依然として多数の注文に対応しなければならず、供給業者からの特別な部品供給が欠如しているというのだ。

さらに、回復状況は業界ごとに温度差がある。より早期回復が見通されるのは、部品や資材への依存度が低い工場や、需要の多い商品を生産する工場だ。例えば、玩具メーカーのハスブロでは新型コロナウイルスの流行中、多くの家族が外出を自粛したため「プレイドー」や「モノポリー」の需要が増加した。同社の中国における生産はほぼ通常の状態に復活している。

ウイルスが3カ月前には想像すらできなかった方法で生活手段や経済を変化させる中で、当然ながら人やコミュニティ、事業の健全性とセキュリティが注目を集め続ける。

いずれにせよ、中国本土では当分の間、社会的・経済的な困難が続くだろう。アランは「世界中の国々が当分の間、新型コロナウイルスの苦難を味わい続け、経済への真の影響が本当に理解されることはしばらくないだろう」と考えている。

「日常を取り戻した」とまではいかないものの、中国本土で明るい兆しが見られていることは、他国に回復の第1段階が何をもたらすのかを提示していることだけは確かである。