JLL、「2018年版グローバル不動産透明度インデックス」を発表

日本は14位にアップ、サステナビリティ(環境不動産)への取り組みが貢献

東京 2018年7月25日


総合不動産サービス大手のJLL(本社: 米国シカゴ、CEO: クリスチャン・ウルブリック、NYSE: JLL、以下: JLL)とラサール インベストメント マネジメント(本社: 米国シカゴ、CEO:ジェフ・ジェイコブス、以下:ラサール)は、「2018年版グローバル不動産透明度インデックス」を発表しました。


不動産透明度インデックスは、JLLとラサールがグローバルネットワークを活用して世界の不動産市場に関する情報を収集し、各市場の透明度を数値化した独自の調査レポートです。2年に1度発行しており、2018年で第10版となります。2018年版では、世界100ヵ国、158都市を調査対象とし、186要素を6つのサブインデックスにおいて分析しています。


今回の調査結果では、投資家、企業、政府など社会全体からの透明度向上への圧力や、「不動産テック」の活用が進むハイテク市場の成長により、不動産透明度の水準は益々高まっています。その結果、不動産透明度「高」の市場は前回の10ヵ国から11ヵ国へ、「中高」の市場は20ヵ国から21ヵ国に増加しました。またグローバルに広がるESG(環境・社会・企業統治)投資の要求に応え、今回新たにサブインデックスにサステナビリティ(環境不動産ストックの形成における要素)を加えたところ、建築物省エネルギー性能表示制度など、以前から環境不動産に対する日本の積極的な取り組みが評価されていた日本は前回19位だった順位を14位に高めました。


ハイライトは以下の通りです。

【グローバル】

  • 2018年版では調査対象国100ヵ国のうち85%で透明度が向上している。6つのサブインデックス(グループ化した検証項目)のうち最も大きく改善したのは「市場ファンダメンタルズ」の項目で、多くの国で入手可能なデータ量や質の改善が進んでいる。一方で、投資家や企業、社会全体はより高い透明度基準を要求しており、不動産テックによる透明度の大幅な向上が期待されているものの、現状は急速に高まる期待には追い付いていない。


  • 前回2016年版に続き英国(スコア1.24)が1位となり、続いてオーストラリア(1.32)、米国(1.37)といった英語圏が上位を占めた。テクノロジーの活用が進んでいる欧州が追い上げており、最も改善した国の1つであるオランダ(1.51)が6位となった。また、スウェーデン(1.93)は初めて透明度「高」のグループに入った。両国ともに不動産テックの拡大やオープンデータへの取り組みが順位上昇に貢献している。(資料1 、P4)


  • 透明度「高」のグループには前回は10ヵ国が入っていたが、今回は11ヵ国となった。いずれの国も不動産テック、オープンデータへの取り組み、オルタナティブセクターの台頭と旺盛な投資家需要に支えられている。これら透明度「高」の11ヵ国は、世界全体の商業用不動産直接投資額の75%をカバーしている。


  • 投資家の透明度向上に対する要求はより多くの世界都市へと拡大していることを背景に、今回は調査対象を都市圏へと広げ、世界158都市圏を網羅した。国別のランキング同様に、上位は最も流動性の高い英語圏都市が占め、ロンドン(1.24)、ロサンゼルス(1.28)、シドニー(1.32)、サンフランシスコ(1.34)、ニューヨーク(1.37)が上位5都市となった。英国、ドイツ、オーストラリア、カナダなどの透明度が最も高い国々は、主要都市以外についても一貫して高い透明度を維持している。一方、フランス、日本は都市間の格差が大きく、パリや東京以外の市場データはより限定的となっている。(資料2 、P5)


【アジア太平洋地域】

  • アジア太平洋地域は今回、最も透明度が改善した地域である。


  • アジアで最も成熟した不動産市場であるシンガポール(1.97)、香港(1.97)、日本(1.98)は、いずれも透明度「高」のグループに近づいたものの、透明度のトップグループには入らなかった。


  • 他のアジア市場も着実に透明度を向上させている。例えば台湾(2.32)は政府主導で入手可能なデータの拡大、不動産企業の職業規範の向上、賃貸借契約の標準化といった取り組みが進んでいる。ミャンマー(3.96)は、政府による市場開放で投資家の不動産需要が拡大、これによって市場情報が増加し、今回世界で最も透明度が向上し、透明度「低」グループから脱却した。韓国(2.60)でも不動産投資活動の活発化に伴い、入手可能なデータの範囲が拡大し、初の透明度「中高」グループ入りを果たした。(資料3、P6)


【日本】

  • 日本の透明度は前回2016年版で19位(2.03)、「中高」グループの中間に位置していたが、2018年版では14位(1.98)、「中高」グループ内のトップ層になった。


  • 日本のサブインデックス別の順位は、「パフォーマンス測定」では5位(1.67)、「規制と法制度」では18位(1.71)、「サステナビリティ」では3位(1.86、英国と同ポイント)と20位以内にランクインしているが、「市場ファンダメンタルズ」、「上場法人のガバナンス」、「取引プロセス」では20位圏外の結果となった。


  • 日本の透明度が改善した要因の1つは、これまで「不動産サステナビリティ透明度インデックス」として別途計測していた「サステナビリティ(環境不動産ストックの形成)」の項目を、2018年版からは当レポートに統合し、6つ目のサブインデックスに加えたことが大きい。日本は建築物省エネルギー性能表示制度、不動産オーナーやテナントによる任意のグリーンリース条項に関する具体的指針、エネルギー効率基準の導入など、環境不動産ストック形成に対する取り組みを従来から積極的に進めていることが評価された。(資料4 、P7)


  • 都市別の透明度インデックスでは東京と大阪が調査対象となっており、東京(1.98)が26位、大阪(2.22)で30位に入っている。国別のランキングと同様に、「中高」グループのなかのトップ層に位置している。(資料2 、P5)


JLLリサーチ事業部 ディレクター 大東 雄人は次のように述べています。

「日本の不動産透明度はサブインデックスにサステナビリティが追加されたことから、前回の調査から大きく改善し、シンガポール、香港に続く「中高」グループ上位の14位に上昇しました。一方で、透明度「高」の国々と比較すると、世界では不動産テックの普及が透明度の向上をけん引していますが、日本は不動産テックの普及が遅れており、そのほかにも共益費の内訳明細が開示されないなどの商慣習、伝統的な不動産セクターに加えて、新市場であるオルタナティブセクターに関する情報開示やアクセスに課題があることなど、抜本的に見直すべき点はまだ残されています。今後日本が透明度をさらに向上させるにはこうした課題の改善が不可欠です」


資料1



■「JLL グローバル不動産透明度インデックス」

JLLとラサールが有するグローバルネットワークを活用して収集した定量的データとアンケート調査を対象項目ごとに検証、数値化した調査レポートです。1999年から実施され、2年ごとに更新。2018年版で第10版となります。2018年版は調査対象市場を前回の109市場から100ヵ国、158都市へと細分化し、検証項目も前回の139から186項目に拡大、サブインデックスは前回の5つから6つに増やし、より広範囲かつ詳細な調査となりました。186の項目は14のトピックスにグループ化したうえでウエイト付けし、「パフォーマンス測定(28.5%)」、「市場ファンダメンタルズ(16.5%)」、「上場法人のガバナンス(10%)」、「法律・規制(25%)」、「取引プロセス(15%)」、「サステナビリティ(5%)」の6つのサブインデックスに分類しました。不動産透明度インデックスのスコアは、1から5の範囲で採点され、スコア「1.00」が最も透明度が高い国/市場、スコア「5.00」は透明度が最も低い国/市場を示します。