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News Release

東日本大震災による不動産市場への影響と見通し


[2011年7月21日発信] 
2011年3月11日、東北地方の太平洋沖約130km付近でM9.0の地震が発生した。このM9.0という地震は、1923年の関東大震災のM7.9や1995年の阪神淡路大震災のM7.3を上回る国内史上最大、世界でも観測史上4番目の規模であった。
 
 

 
地震による直接的な被害のほか、その後の津波によって様々な二次災害が発生した。岩手県宮古市には日本最大の防潮堤が築かれていたが、今回の波は堤防の倍近くの高さがあったとされ、これまでの経験、想定していたリスクを遥かに上回る規模であった。
東京は震源地から離れていたため、地震による建物の倒壊や津波による被害は軽微であった。しかし津波によって原子力発電所や製油所が被害を受け、放射能問題や大規模停電、ガソリン不足などの問題を引き起こし日本経済にも大きな影響を及ぼした。
 
経済への影響
当日14時46分に発生した地震直後から日経平均は急落し、15日の最安値8,227.63円を付けるまで実に10日の終値1,0434.38から21%の下落となった。また、震災復興のために国外に滞留している日本円が国内に還流する、いわゆるリパトリエーションが起きるという思惑から、当時すでに円高水準であった為替相場はさらに円高が進み、対ドルでは17日の最高値で76円台と歴史的最高値に達した。しかしその後の各国の協調介入によって85円台まで戻し、6月時点では80円台で推移している。また日経平均も9,800円まで回復しており、当初の混乱は徐々に落ち着きを見せている。
6月の日銀短観では、大企業製造業の業況判断はマイナス9ポイントとなったものの先行き3ヶ月の業況判断は2ポイントとなっており、原子力発電所による放射能の影響や電力不足による経済活動への圧迫は今夏がピークとなると予想される(図2)。
 
図2. 日銀短観 大企業製造業DI
 

 
またIHSグローバルインサイトによると震災以前は日本のGDP成長を2011年に1.3%、2012年は1.8%と予想されていたが、震災の影響で2011年はマイナス0.9%に下方修正され、また復興を伴う反動で2012年は4.4%と大きな成長が予想されている(図3)。
 
 
図3. GDPの予測
 
 
そこで、ジョーンズ ラング ラサール リサーチとして、現時点で起こっている事象から、不動産市場への影響と今後の東京オフィスマーケットの見通しを考察する。
 
不動産市場への影響
今回の震災によって不動産市場の需要は大きな転換期を迎えることとなった。これには「Flight to Quality」のみならず「Flight to Safety」といったエリアの再考や建物の安全性に対する認識も大幅に高まった。具体的な動きとしては高層階から低層階、湾岸部から内陸部、低クオリティから高クオリティといった変化が挙げられ、後述する各セクターほぼ全てに同様の傾向が見られている。
 
<オフィス・セクター>
東京市場
では2011年中の賃料水準は弱含みが予想されるが、テナント需要の回復は2012年以降に本格化すると考える。大阪市場では全体的な賃料水準は2013年の大量供給を消化して底を打つと考える。従って2011年、2012年は下落が続くものの、2013年末には横ばいになると予想している。
 
<レジデンシャル・セクター>
高級賃貸住宅市場はエクスパットの海外逃避により大きな影響を受けているものの一般賃貸住宅市場は大きな影響を受けておらず賃料収入も安定して推移している。
 
<リテール・セクター>
百貨店やショッピングセンターにおいては震災の影響は一時的だが、外国人観光客に下支えされてきた銀座や表参道に代表される高級リテールについては暫く弱含むことが予想される。

<ロジスティクス・セクター>
災害に耐えうる最新型物流施設への見直しが高まっており、今後は物流倉庫においても免震・制震機能を備えた近代的な施設への需要が高まることが予想される。
 
<ホテル・セクター>
需要減少は一時的なものであり、比較的短期で回復すると考えられる。回復基調は様々だが、1-2年で回復するという見方が優勢である。
 
<不動産投資市場>
国内投資家には大きな変化はなく、海外投資家も長期的には楽観しているがドイツの投資家が一部例外である。
 
東京オフィスマーケットのトレンド
 
東京CBD*のAグレードオフィス市場では震災による直接的な被害は見られなかったが、テナントは耐震性を再認識しつつある。特に最新の建築技術を用いた大型ビルへの需要が増えており、これによって建築年数が古く、耐震性の劣るビルはさらにテナントから敬遠されつつある。また、今夏予想されている本格的な電力不足によって電力の使用量が制限される見込みである。従って自家発電設備を持つ一部競争力を有するビルはますますテナントを集め、競争力の劣るビルはより一層テナント誘致が困難になるという2極化が進むことが予想される。
 
今後5年間の新規供給を見てみると、震災の影響で需要が落ち込むと予想される2011年は極めて限定的である。その後の回復期には過去10年平均とほぼ同等の供給が計画されているため、需給バランスにおいて懸念材料は見当たらない。また、震災復興のために政府は建設業界に支援を呼びかけており、建設資材が被災地へ優先されることで今後Aグレードビルの竣工時期に影響が出る可能性もある。しかしながら市場への供給量が絞られることは需給バランスの視点からはむしろプラス材料といえる。
 
また、海外企業・投資家の最大の懸念は未だに事故の収拾が見えない原子力発電所の問題である。しかし福島から東京都心部は200km以上も離れており、このまま大きな事故も無く冷却装置の復旧が進めば、さらなる放射性物質の拡散リスクはひとまずの落ち着きを見せる。その後の土壌汚染、海洋調査等、安全確保への課題は山積しているが、不動産市場への物理的な影響は底を打つこととなる。
 
震災、電力不足、原発の懸念とテナント需要を押し下げる要因は様々であるが、東京Aグレードオフィス市場には、賃料下落余地はあまり残されていない。震災前には回復の兆しが見えていた東京市場であるが、震災によってテナントの動きに鈍化が見られたため今回、賃料サイクルにおける東京の位置の見直しを行った。しかしながら現状の賃料水準はマーケットサイクルでもほぼ底値圏で推移しており、大量供給を経験した2003年の賃料水準に近づいている。当時と現在のビルのクオリティ、スペックを考慮すると賃料が同程度というのは明らかに割安水準といえる。
 
復興に向けて互助の機運が高まる現在の状況下では、オーナーも露骨な賃料引き上げを行うことは賢明な選択ではなく、むしろ中長期的な観点でテナントと友好な関係を築くチャンスといえる。従って2011年中の賃料水準は弱含みが予想されるが、ひとたび上昇に転じれば継続的な回復が期待され、テナント需要の回復も2012年以降に本格化すると考える。ジョーンズ ラング ラサールでは、2011年は賃料は3-5%程度の下落はあるものの、2012年には5-10%の上昇を見せると予想している(図4)。
 
図4.東京市場の供給と賃料

 
また、売買市場においては震災によって東京の不動産市場にはむしろ逆にリスク・プレミアムが乗るとの議論もあるが、現状では投資家のスタンスは変わっておらず、国際的な投資先としての重要性も再確認されている。また貸し手である国内金融機関においても貸出金利にプレミアムを上乗せすることもなく、外資系レンダーも現在のところこの動きに追随している。従ってキャップレートは2012年の市場回復期には低下することを見込んでいる。
 
見通し
震災直後は総悲観に傾いた日本経済及び不動産市場であるが、その回復は当初の予想よりも早いペースで進むことが十分考えられ、ひとたび回復に向かえば急カーブを描いて加速度的となる可能性もある。不動産市場における需要の減退は一時的なものにとどまると考える。実際、2011年に入って日本の不動産市場は回復の兆しを見せ始めていたところであり、今回の震災によって本格的な回復が2012年に先送りされるにとどまると考える。また過去を振り返ると、1995年1月に阪神大震災が起きた年と翌年に被災地の中心であった兵庫県の住宅の着工数は復興需要により大幅に増加した。これによって不動産市場が活気付くのは勿論の事、GDPの押し上げ要因にもなった。同様の傾向が今回の震災復興にも考えられることから2012年は経済回復とともに日本の不動産市場も回復するであろう。

ジョーンズ ラング ラサールについて
ジョーンズ ラング ラサール(ニューヨーク証券取引所上場:JLL)は、不動産に特化したプロフェッショナルなサービス会社で、不動産オーナー、テナント、投資家に対し、国内外を問わず世界中で広範囲な知識を有する専門家が、不動産に関するサービスを提供しています。グループの2010年度の売上高は約29 億ドルで、全世界の60 カ国、約1,000都市を網羅する185の事業所で業務を展開しています。 また、プロパティサービス及び企業向けファシリティマネジメントサービスにおける世界のリーディング カンパニーとして、約1 億6,700万平方メートル(約5,060 万坪)の不動産を管理しています。 ジョーンズ ラング ラサール グループにおいて不動産投資・運用を担当するラサール インベストメント マネージメントは、総額約430 億ドルの資産を運用しています。
ジョーンズ ラング ラサールのアジア太平洋地域での活動は50年以上にわたり、現在では13ヶ国、78 事業所で約19,700名のスタッフを擁しています。詳細な情報はホームページをご覧下さい。www.joneslanglasalle.co.jp