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News Release

東日本大震災の東京オフィスマーケットへの影響


[2011年4月18日発信] 
3月11日に発生した東日本大震災とそれに伴う大津波による犠牲者は4月14日現在13,000人を超えた。被害は東京から北方に200km以上離れている東北地方に集中していたため、東京を中心とした首都圏においては直接的な被害は小さかった。しかし、生産拠点としての位置づけであった東北地方の被災によるサプライチェーンの寸断や福島原発の事故に起因する電力不足は全国規模で経済活動に影響している。今回の大震災は1995年の阪神・淡路大震災を超える被害が見込まれている(図表1)。
 
 
 
図表1. 東日本大震災と阪神淡路大震災の比較

 
地震後には株価の急落や為替が史上最高値となる1ドル76円台をつけるなど、金融市場も混乱したものの、G7が協調介入を実施し、ひとまず落ち着きを取り戻している(図表2)。
 
図表2. 日経平均株価と為替レート(円/ドル)の推移

 
しかし、生産施設の被災や首都圏の電力不足は経済活動に大きな影響を与えており、IMFやIHSグローバルインサイトは日本のGDP予測値について2011年は下方修正した一方で、2012年の上方修正を行った(図表3)。
図表3. 震災前後における日本GDP予測値の変化
 

 そこで、ジョーンズ ラング ラサール リサーチとして、現時点で起こっている事象から、今後の東京オフィスマーケットの見通しを考察する。
 
■ 東京オフィスマーケットのトレンド
<拡張・集約需要の縮小>
企業業績の改善と十分な調整が進んだ賃料水準という条件がそろったことで、2011年に入りテナントの動きは活発化しつつあった。しかし今回の地震により直接的被害がない企業においても、電力不足からくる計画停電により企業活動が制約されており、また日本中に漂う自粛ムードに起因する消費縮小により、今後の企業業績は極めて不確実なものとなっている。こういった状況下では、企業のリスク回避行動としてオフィスの拡張・集約といった動きはとりあえず棚上げして様子見姿勢をとる結果、テナントの需要は震災前より減退していると考えられる。逆に、先行きが見えない中で、急な縮小、移転といった動きも抑制されるものと考える。
 
<外資系企業の移転・撤退>
地震に対する警戒はもちろんであるが、原発事故による放射性物質を恐れた外資系企業を中心として、東京から移転の動きが活発になっている。行き先候補は大阪・福岡といった西日本まで広がっており、中でも大阪に集中している。移転の大部分は1年以内の短期契約であるが、中には恒久的な移転も見られ、これまで2013年の大量供給問題により弱含みが続いていた大阪オフィスマーケットにも久しぶりのプラス材料がでてきたことになる。更にBCP(Business Continuity Plan)の観点から、東京と大阪の2拠点体制を検討している企業も増加している。一方でこれらの動きは、ようやく底打ちの兆しが見え始めていた東京オフィスマーケットにもマイナスのインパクトを与えることとなる。
 
<高スペックビルへの移転需要の増加>
ビルの耐震性能に対する意識が更に高まっている。旧耐震ビルからの移転に加えて、新耐震基準を満たしているビルであっても、より耐震性能に優れたAグレードビルへの移転需要も見られている。また、電力不足が企業活動の支障となっていることから、自家発電設備を備えているビルへの問い合わせも急増しており、今後よりビルスペックが重視されることは間違いない。つまり「Flight to Safety(安全への逃避)」「Flight to Quality(質への逃避)」の動きがより顕著になることが予想される。
 
<外国人投資家の意欲は変化なし>
地震が発生したことで投資家による物件取得の延期が見られている。これは地震直後の金融市場の混乱による増資中止等が要因となっているものもあるが、大部分は地震による建物の物理的なチェックのためである。しかし、グローバルかつ中長期的な視点で投資してきた投資家の日本に対する投資意欲は変わっておらず、むしろ物件取得を進めることで、マーケットにおけるプレゼンスを高めるチャンスであると見ている。
 
デットマーケットに関しては、外資系レンダーによる日本に対するリスクプレミアムの上乗せといった動きも見られず、国内レンダーの融資姿勢にも変化はない。したがって、現時点における資金調達環境に大きな変化は見られていない。
 
■ 東京オフィスマーケットの見通し
短期的には震災による企業業績悪化及び外資系企業の移転・撤退によるオフィス需要の減少により東京オフィス賃料は全般的には弱含むであろう。しかし、その後は復興需要により景気回復が後押しされることで、オフィス需要の回復と割安な賃料が相まってオフィスマーケットは回復すると考える。そしてその過程では、高いスペックを有しているAグレードオフィスがまず先行すると考えられ、東京Aグレード賃料は、2011年に3-5%の下落ののち、一転して2012年に5-10%の上昇を見せると予想する(図表4)。そして、Bグレード以下の賃料回復のタイミングまで、しばらくタイムラグが生じるであろう。
図表4. 東京Aグレードオフィス賃料予測の変化

 
投資家の視点から見ても、日本は未だ世界第3位の経済と世界でも有数の不動産市場を有しており、グローバルアロケーションを考える際には決して、除外することはできない市場である。近年中国をはじめとしたアジアの不動産市場が投資対象として注目を集めているが、これらの市場は高成長に裏付けられた高いリターンは見込めるものの相応にリスクも高い。よってリスク分散の面からもより安定した市場である日本への投資も必須であるのは変わらないだろう。ただし、投資家の様子見姿勢が見られることが予想されるため、当面短期的には不動産価格の頭打ちも見込まれる。
 
原発事故に対して過敏になっている海外のテナント・投資家が見られる一方で、海外から冷静かつ客観的な目で見ているグループが存在しているのも事実である。自粛ムードが蔓延している日本国内であり、オフィス拡張・移転の延期、物件取得の再検討、ポートフォリオの再調整といった動きが短期的には東京・大阪オフィス市場に影響を与えることになるが、売買・賃貸の交渉時において良い条件が引き出せるというタイミングでもある。
 
状況は日々刻々と進展しているため、絶えずモニターしていく必要がある。ジョーンズ ラング ラサールは今後も最新動向を把握し、より詳細なレポートを発信していく予定である。
 
ジョーンズ ラング ラサールについて
ジョーンズ ラング ラサール(ニューヨーク証券取引所上場:JLL)は、不動産に特化したプロフェッショナルなサービス会社で、不動産オーナー、テナント、投資家に対し、国内外を問わず世界中で広範囲な知識を有する専門家が、不動産に関するサービスを提供しています。グループの2010年度の売上高は約29 億ドルで、全世界の60 カ国、約1,000都市を網羅する185の事業所で業務を展開しています。 また、プロパティサービス及び企業向けファシリティマネジメントサービスにおける世界のリーディング カンパニーとして、約1 億6,700万平方メートル(約5,060 万坪)の不動産を管理しています。 ジョーンズ ラング ラサール グループにおいて不動産投資・運用を担当するラサール インベストメント マネージメントは、総額約450 億ドルの資産を運用しています。
ジョーンズ ラング ラサールのアジア太平洋地域での活動は50年以上にわたり、現在では13ヶ国、78 事業所で約19,400名のスタッフを擁しています。詳細な情報はホームページをご覧下さい。
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